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原子力発電

冷却系統

 原子力安全の鉄則は①止める ②冷やす ③閉じ込める の3つです。これらのどれかが欠けただけで原子炉は非常に危険な状態となります。これを避けるため②の冷やすについて、幾重もの対策がとられています。ここではその詳細についてみていきます。

 

通常時

 通常時、原子炉の熱はエネルギーを生み出すための源です。したがってその熱は主蒸気により取り出され、タービンにより運動エネルギーへと変換され電気を生み出します。また、これ以外の余剰なエネルギーは復水器において冷却水へと移行し、最終的に海(最終ヒートシンク)へと放出されます。

原子炉停止時

 地震の発生や、タービンの同期ずれなどが起こると、運転を停止するため原子炉がスクラムし、主蒸気隔離弁が閉となります。制御棒が挿入されるため、核分裂反応は収まりますが熱はその後何時間もの間、放出され続けます。しかし、主蒸気隔離弁が閉じているためいつものようにタービンや復水器により水を冷却することはできません。また、崩壊熱により炉心内の水はどんどんと蒸気に変化します。すると容器内の圧力もどんどん上がっていきそのままでは破壊してしまうため、その前に安全弁が開き蒸気を放出します。すると、圧力は下がりますが、容器内の水量は減少します。すると、炉心の温度はさらに上がり蒸気ができて……と繰り返していきます。したがって、この際にしっかりと冷却を行わないとメルトダウン等の危険性があります。

 この対策として、非常用復水器(IC)、および原子炉隔離時冷却系(RCIC)が設置されています。​

非常用復水器(IC、イソコン)

 ICはBWR-3型以前の炉で使われている冷却系統です。ICの特徴は「バルブさえ開いていれば動力なしで除熱できる」ことです。ICは原子炉建屋の最上階付近に熱交換器を設け、そこに水を入れておきます(一般的な熱交換器では冷却側も水をポンプにより流しますが、ICでは無動力で稼働させるために水を貯めておく方式となっています)。非常時には原子炉からの配管のバルブを開けることで、高温となっている蒸気がより高い位置にあるICへと自然に押し込まれ、熱交換により水に戻った後に再循環系へと帰っていきます。当然、IC内に貯めてあった水は熱交換により蒸気となりますので、これらは建屋外へと排出されます(いわゆる豚の鼻)。したがって、長時間の稼働を続けると水がすべて蒸気となって出て行ってしまうため、冷却機能を失います。BWR-3型の炉では一般にICが2系統用意されています。福島第一原子力発電所1号機の場合は、このICのバルブを「閉じた」状態で津波による停電が発生したために、除熱することができずメルトダウンが発生しました。

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原子炉隔離時冷却系(RCIC)

 RCICはBWR-4型以降の炉でICの代わりに使われている冷却系統です。RCICは復水貯蔵タンクもしくはS/Cから水をポンプによりくみ上げ、炉心へと供給します。このポンプはどうやって駆動するのかというと、ここで蒸気を利用します。すなわち、普段は発電用のタービンを回している蒸気を、ポンプ駆動用のタービンへと誘導し、ポンプを駆動、注水するものです。

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