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送配電工学

なぜ高圧で送電するのか

 一般に送電線の電圧は275kVや500kVなど超高圧に設定されているのはご存じのとおりです。ところで、なぜ高圧で送電しているのでしょうか。実は発電機を出たばかりのころはそんなに電圧は高くありません。発電所を出てからわざわざ変電所を通して昇圧し、需要場所に近づいたら再度降圧しているのです。なぜこのような一見めんどくさいことをしているのか、見ていきます。

送電線の電圧

 様々な電圧が存在する送電線ですが、実はこの電圧は自分勝手に決めることはできません。経済産業省所管の「電気設備の技術基準の解釈」によって規定されています。その電圧は次の様です。

​電気事業者はこれらの電圧から送電線の電圧を選ぶことになります。「一地域においてはいずれか一方のみ採用」と書いてあるものに関しては一つの電力会社の管内でどちらかの電圧をだけ使えるということです。例えば、東京電力の場合、発電所から66 kVで引き出され変電所で昇圧、500kVにしたのち首都圏まで送電し、都内に入る前で275kVに高圧、さらに順次154kV、66kVと降圧されていって最終的に配電用変電所へ到着します。つまり、東京電力では220kVや187kV、77kVは使用することができません。

なぜ昇圧して送電するのか

 ところで、なぜ高い電圧にしてから送電するのでしょうか。ほとんどの電力会社において500kV程度まで昇圧しています。結論を言ってしまえば、電圧が高いほうが電力の損失が少ないからです。送電線は電気を通しやすいとはいえ、電気抵抗を持っています。この値はできるだけ小さくなるように素材を選んでいますが、送電線はとても長いためこの抵抗が無視できないものとなってしまいます。したがって、送電線を通る間にも電力は熱として逃げて行っているのです。この電力損失の大きさは次式であらわされます。

​ここで、Iは送電線を流れている電流の大きさ、rは送電線の抵抗です。さらに、負荷に届けたい電力をPとすると電流I​は次のように表すことができます。

よって、これら二つの式を合わせると

となります。したがって、電圧V​を大きくすることで電力損失を小さくし効率よく送電できることが分かります。

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