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送配電工学

コロナ放電

 送電線は一般に周囲の建築物や人々から十分な距離をとって設備されていることから、裸電線が利用されています。したがって、その絶縁は周囲に存在する空気に依存しています。一般にこの空気の絶縁耐力は電線が生じる周囲の電位の傾き(V/m つまり電場強度)より大きいことから、送電線から放電が起こることはありません。しかし、何らかの要因で絶縁耐力より高い電場が生じてしまった場合、送電線から周囲へ放電が生じます。これがコロナ放電です。コロナ放電が起こると、青白い光が生じるとともに周囲への雑音、さらには電波障害や通信線への影響を与えます。また、これらに消費されるエネルギーがコロナ損と呼ばれる損失として失われます。

 送電線においてコロナ放電が発生する電圧は次式により与えられます。この式を利用することで上記のように電場を考える必要はなくなります。

ここで、m0は電線の表面係数、m1は天候係数(晴天時1.0、雨天時0.8)、r は導体の半径[cm]、は線間距離[cm]、δ は相対空気密度(=0.290p/(273+t))です。導体の半径 r が分母に存在することから、送電線の導体が細くなるほど、コロナ放電が発生しやすくなります。一方で、表皮効果の影響を少なくするためには導体は太いほうが良いのでした。したがって、実際の送電線では細い導体を用いて表皮効果を抑えるとともに、多導体とすることで仮想断面積(多導体にしたことにより素導体ごとの電荷が減少するため断面積はより大きいと考えられるようになる)を大きくし、コロナ放電を抑えています。

 コロナ放電による電線1条、1kmあたりの電力損失は次式により表されます。

ここで、f は周波数[Hz]、d は導体の外径[cm]、D は線間距離[cm]、Eは電線の対地電圧[kV]、E0はコロナ臨界電圧[kV]、δは相対空気密度です。

コロナ放電の対策

①外径の大きな電線を用いたり多導体とすることで導体表面での電位の傾きを小さくする

 →コロナ臨界電圧を高くすることができる

②電線や設備などの設備の表面は可能な限り滑らかにする(表面の傷なども含む)

 →表面係数が大きくなり、コロナ臨界電圧を高くすることができる

③コロナ雑音が電線場を伝搬しないような設備とする

 →コロナ雑音の影響を一部にとどめることができる

④通信設備のアンテナを送電線から話したり、指向性を持たせる

 →コロナ雑音が電波に影響しにくくなる

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出典:酒井祐之、「送電・配電」、オーム社、2001

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